「そういえば、レイってお酒飲むの?」



それは、私の一言が始まりだった。


午後六時を回り、外が薄暗くなった頃。


酒場が定休日の今日

私はカウンターでグラスを拭いていたレイに尋ねた。


私の言葉に、ソファに座っていたロディも続ける。



「そういや、レイが酒を飲んでるのは見たことがないな。」



すると、レイは手に持っていたグラスを
トン、と置いて答えた。



「酒はあんまり飲んだことない。

酒場を始めた頃に、一人で味見をしたくらいだ。」



へぇ…そうなんだ?


そういえば、確かに…


ロディはお酒強いし、酒場で飲んでるのも見たことあるけど

レイはいつも水とかお茶とかを飲んでる。



レイは、カウンターを出て私の隣にくると、腕組みをしながら言葉を続けた。



「闇喰いやってた頃は、酔っ払った状態じゃ闇と戦えないし…

酔った勢いでルミナに正体をバラしたらまずいと思って、酒は飲まないようにしてたんだ。」



…!


あ、そっか…!


私のために禁酒してくれてたんだ…。


胸が、じぃん、と熱くなったその時

ロディがソファから、すっ、と立ち上がった


そして、ふっ、と微笑んで私たちに言う。



「じゃあ、今から外になんか食べに行くか。ちょうど酒場も休みだし。

せっかく闇喰い引退したんだから、酒飲んでみれば?」







私は、ロディの提案に目を輝かせる。



…レイは、今までずっと私のために自由な生活を送れなかった。


今日からは、レイに何でも好きなことをやって欲しい。


…実は、お酒好きかもしれないし。



「レイ、行こうよ!」



私が誘うと、レイは小さく息を吐いて、

「そうだな、たまには外食するか。」と呟いた。



やった!


三人で外食なんて、初めて…!



ロディは、タリズマンから支給された新型のパソコンを閉じて言った。



「酒が美味い、いい店を知ってるんだ。

料理も美味いから、きっと嬢ちゃんも楽しめる。」



わぁ…っ!

さすが、ロディ!



私とレイは、ロディに連れられて、うきうき気分で酒場を出た。



…まさか、あとで“あんなこと”が起こるとは知らずに…。