ふわふわの長い前髪の間から覗く綺麗な翠色の瞳が優しげに細められた。


モートンはいつもの白衣を着ていて

街中にいると少し目立つ。


この世から隔絶したような樹海に住んでいてお客が来ても面倒くさがって出てこない上に研究に没頭しているモートン。


賑わう大通りで出会うなんて思わなかった。



「モートン、どうしてここに?」



私が尋ねると、モートンは手に持っていた袋を持ち上げながら答えた。



「昨日からロディ君がログハウスにいるので食材を買いに来たんです。

僕の家にはココアとコーンスープと苦い薬草しかないですから。」



あ、そっか。

ロディは傷を治すためにモートンのお家にいるんだ。



「ロディの具合はどうですか?」


「心配しなくても、千歳草の力で傷はだいぶ治りました。

まだ絶対安静なんですが、彼は“もう帰る。”と、勝手に歩き回るので手に負えません。」



…!


モートンの苦笑する様子を見て、私は胸をなで下ろす。


ロディの傷は回復したんだ…!

よかった…。


私は、笑い返しながら言葉を続けた。



「千歳草って、本当にすごいんですね。

あんな大怪我をしたのにすぐ治るなんて…」



すると、モートンは少し低いトーンで私に答えた。



「千歳草は良薬ではありますが、使い方を間違えれば猛毒にもなります。

古くからサンクヘレナに植生していますが、正しい使い方を知っている人は少ないでしょうね。」






そうだったんだ…!


光にも、闇にもなりうる…。

まるで、“魔法使い”みたい。


その時、モートンが私に向かって首を傾げながら尋ねた。



「そういえば、ルミナさんはお一人ですか?

買い出しでここに?」



「あ、私はさっきまでレイといたんですが…」



私は、そう答えかけて、はっ!とした。


頭の中に一つの案が浮かぶ。


…レイとずっと一緒に暮らしていたモートンなら、レイの事をたくさん知っているはず…。


私はモートンに向かって尋ねた。



「モートンは、ルオンを知っていますか?

レイの弟なんですけど……」



「えぇ、知っていますよ。

…深く関わったことはないのですが、レイ君からたまに話を聞きました。」



私はさっき起こった出来事を話し始めた。


モートンは、黙って私の話を聞いている。



「二人は、会った時から険悪な感じだったんですが…

ルオンがレイのことを“一号”って呼んだら、急にレイがルオンに掴みかかって…」



と、私がそう言った瞬間

モートンがぴくり、と反応し、今まで閉じていた口を開けて動揺した声で言った。



「“一号”…?

その少年は、レイ君のことを“一号”と呼んだのですか?」



え…?