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酒場を出てから数分。

私はレイさんと並んで街を歩く。


話題がなくて、ちょっと気まずいな…。


私は、ちらりと隣を歩く青年を見上げる。


綺麗な銀髪。ギルの黄金の髪の毛とは正反対。

瞳の色も、ギルは深紅の薔薇色だけど、レイさんは深い海のような碧色だ。


全く逆だなぁ…。


すると、私の視線に気がついたのか、レイさんがじろりと私を見下ろした。


「何?」


少し低い声にびくりとしながら答える。


「あ…あの、ギルとは違うけど、何だか綺麗だなぁって思って…、つい見惚れてしまって…」


つい出てしまった本音に、私は、かぁっ!と顔が熱くなる。

“綺麗”とか“見惚れた”とか、男の人にとっては褒め言葉なのかな。


気分を悪くしてたらどうしよう…!


しかし、私の不安とは裏腹に、レイさんは少し顔を赤くして私に言った。


「き…急に変なこと言うんじゃねーよ。…もうこっち見んな。」


黙り込むレイさんに、私は、ぱちぱちとまばたきをする。


もしかして、照れてるのかな…?


私と会った時から、どこか私を遠ざけようとしているし、全く笑わないから怖い人だと思ってたけど、そうではないのかもしれない。

するとその時、レイさんが何かに気づいたように、はっ!として私の腕を掴んだ。


「ひゃっ!な、何ですか…?」


私がドキドキしてレイさんを見ると、彼は真剣な顔をして私の腕を見つめながら言った。


「……傷が出来てる……」


…え?


その言葉に自分の腕を見ると、確かに真新しい切り傷のようなものが出来ている。

全然気がつかなかった。

おそらく、昨日闇に襲われた時についたものだろう。


すると、レイさんは少し眉を寄せ、そのまま私の腕を引っ張った。


「ちょっと寄り道するぞ。傷を治す薬草を育てている奴がいるんだ」


え!


まさか、傷を治すためにそこへ連れて行ってくれるの?


「いいですよ!小さな傷ですし…これ以上迷惑をかけるわけには…!」


しかし、レイさんは、ばっ!と私の方を向いて言った。


「お前女の子だろうが…!傷が残ったらどうするんだよ。いいから黙ってついて来い」