ケダモノ、148円ナリ

「はい。
 わかりました。

 頑張ります。
 おにいさまもお気をつけて」

 ふう、と携帯を切った明日実を無言で手招きする。

「なんですか?」
と警戒したまま、明日実は訊いてくる。

 なんですかじゃないだろう、と思ったとき、明日実が逃げ腰に言ってきた。

「私、今日はもう寝ますね。

 これ以上おかしなことしないでくださいね。
 今、おにいさまと話して、心が洗われたばかりなのに」

 待て、こら。
 俺と話すと、心が乱れて、汚されるのか。

 本当に汚してやろうか、と思いながら、
「お前、ちょっとおかしいと思わないのか?」
と言う。

 え? と明日実がこちらを見た。

「稲本顕人は……」

 だが、そこで言葉を止める。

 これを言うことが自分のためになるとも思えなかったし。

 言ったところで、明日実を混乱させるだけだとわかっていたから。

 ソファから立ち上がり、
「寝る。
 おやすみ」
と言うと、明日実は、

「お……おやすみなさい」
と戸惑いながら言ってくる。