ケダモノ、148円ナリ

 




「……お、おにいさま」
と言った明日実が青くなる。

 稲本顕人か、と貴継は舌打ちをした。

 今度、明日実が寝ている隙に着信拒否しといてやろう、と思う。

 だが、明日実が動揺を押し隠し、顕人に応対している様がちょっと可笑しく、そのまま眺めていた。

 明日実は顕人と話しながら、すすすすっと自分から離れていく。

「はいっ。

 ……はいっ。
 会社は楽しいです」

 そんな畏まって話さないといけないような相手と付き合ったって、どうせ上手くはいかなかっただろうに。

 ……なにがおにいさまだ。

 俺には言いたい放題のくせに、と拗ねる。

 だが――。

「ふふ。そうですね。
 最初だけかもしれません」

 自分の手から逃れ、笑って話す明日実は可愛い。

 ……可愛いじゃないか。

 そんな顔をいつも俺にも見せてみろ、と思う。

 この俺が側に居るのに。

 そいつが、そんなに後を引くほどいい男か?