ケダモノ、148円ナリ

 貴方、悪代官ですかーっ、と思ったとき、明日実の携帯が鳴り出した。

「あっ、電話がっ」
「放っておけ」

「会社からの呼び出しかもしれませんっ」

「まだ、あるかっ。
 ていうか、俺に連絡ないのに、まずお前にあるかっ」

 そう言いながら、軽く髪を撫で、キスしてくる。

 やっ、やっぱりやだーっ、と思ったとき、一度止まった電話がまた鳴り出した。

「……しつこい電話だな」

 一度離れた貴継がちらと、そちらを見て言う。

 その隙に、明日実は手を伸ばし、鞄の中の携帯を引き寄せた。

「もっ、もしもしっ」
と出ると、あっ、こらっ、と貴継が止めようとする。

 だが、助けてっ、と言おうとした明日実の言葉は喉の途中で止まっていた。

「……お、おにいさま」

 やばい。
 この人には助けは求められない。

 婚約者なのに、なんで助けてだ、と言われてしまうからだ。