ケダモノ、148円ナリ

「なんで私なんですか?」

 ますます疑問に思い、もう一度問うてみた。

「運命を感じたからだ」

 ……運命。
 なにか急に話がデカくなってきたぞ。

「俺は、お前と会ったときに、未来が見えた気がしたんだ」

「私には、なにも見えませんでしたが」

 目の前のタクシーしか見えなかった。

「最初は阿呆な女だな、としか思わなかったんだが。
 タクシーに乗って、前を走るタクシーを見ている間、ケダモノを買うくらいなら、俺を飼ってくれないだろうかとか思ったし。

 お前のタクシーが一度消えたと思ったら、俺がロビーに入ったあとで、現れて」

「……住所言い間違って、別館の方行っちゃったんですよ」

「お前が遅刻寸前、駆け込んで、こけかけたのを俺がずっと見てたのも運命だ」

 嫌だな、そんな運命。

「お前が、入社試験に受かったのも。

 俺がこのタイミングで人事部長になったのも。

 あの日、レストランで、お前を見かけて、わざとトイレに行くふりをして、横を通ったら、お前が俺の腕を引っ張ったのも運命だ」