ケダモノ、148円ナリ

「ああ見えて、ひとりひとりに気配りしてくれるてるし。

 部内の風通しがよくなったって言うか。

 部下のことを良く見てて、事あるごとに改善されたポイントを褒めてくれるから、みんに、すごくみんなやりがいがあるみたいで。

 まあ、怒ると怖いんだけどね」

 ……まあ、確かに。
 昨日一日見ていただけでも、そんな感じはあった。

「さすが天野の……」

 そこで、安田課長は言葉を止めて、呑み込む。

 天野の……?

 ん?
 天野?

 そういえば、確か、と思ったとき、
「あー、着いたね」
と誤摩化す風でもなく、やんわりと課長は言う。

 でも……今、誤摩化しましたね、と思った。

 そうと感じさせないように言う、この誤摩化し方。

 さすが人事課長。

 穏やかそうで、人が良さそうだが、なかなか侮れなさそうだ。

 気をつけねば。

 ……って、私が産業スパイか。

 貴継と暮らしていること以外に、特に秘密はない。