ケダモノ、148円ナリ

 仕事の上での弱みとか絶対見せそうにないというか。

「まあ、研修中はみんな早いんだけどね。
 だんっだん、遅くなってっちゃうんだよね~」
と安田課長は、あの人の良さそうな顔で、はは、と笑う。

 うーん。
 貴継さんより随分年上だよね、この人。

 あんな若造にいきなり部長になられて、嫌じゃないのかなあ。

 っていうか、あの若造はどうして、部長なのかなあ。

 確かに切れ者のようだが、それだけで、あの若さで大企業の部長になるのは難しいような気がするのだが。

『この産業スパイがっ』
という謎のおじさんの捨て台詞を思い出していると、

「仕事にはもう慣れた?」
と課長が訊いてくれる。

「あ、いえ、まだ全然。
 でも、みなさん、よくしてくださるので、なにもかも覚えやすいです」
と言うと、

「いや、君はかなり飲み込みが早いから」
と言ったあとで、

「天野部長がいらしてから、ずいぶん、部内の雰囲気が良くなったんだよね」
と言い出した。