ケダモノ、148円ナリ

 一拍置いて、顕人が立ち上がる。

「誰なんだっ、その男はっ。
 明日実っ!」

 客も、ちょうど挨拶に回っていた顔なじみのシェフも振り返る。

 いや……誰なんでしょうねえ、とちょっとだけ正気に返った明日実は、はは、と苦笑いしながら、おそるおそる男の顔を見た。

 どうも何処かで見た気がするその男は溜息をついてはいたが、手を振りほどいたりはしなかった。