外に出ると、まるで見計らっていたように携帯が鳴り出した。
「お疲れさまですー」
貴継だ。
『そのまま帰るなよ』
と第一声で脅してくるので、ど、何処かで聞いていたのだろうか、今の会話っ、と怯えて周囲を見回す。
『この産業スパイがっ』
というあのおじさんのセリフを思い出していた。
スパイなんだから、なんかすごい盗聴器で私の会話を仕事しながら聞いてるとか。
ビルの上から、私を狙ってるとか。
……そりゃ、スナイパーか。
まあ、そもそも、一新入社員を盗聴したり、狙ったりする理由は、産業スパイにはないのだが。
『妄想は落ち着いたか』
何故わかったんだ、というタイミングで貴継が言ってきた。
『いや、いきなり帰るなと言ったら、お前のことだ。
またいろいろ考えてるんだろうと思ってな』
と解説までしてくれる。
『単に疲れてて、帰りたそうに見えたから、言っただけだ。
おかしなところに頭を回してないで、仕事に使え』



