ケダモノ、148円ナリ





 外に出ると、まるで見計らっていたように携帯が鳴り出した。

「お疲れさまですー」

 貴継だ。

『そのまま帰るなよ』
と第一声で脅してくるので、ど、何処かで聞いていたのだろうか、今の会話っ、と怯えて周囲を見回す。

『この産業スパイがっ』
というあのおじさんのセリフを思い出していた。

 スパイなんだから、なんかすごい盗聴器で私の会話を仕事しながら聞いてるとか。

 ビルの上から、私を狙ってるとか。

 ……そりゃ、スナイパーか。

 まあ、そもそも、一新入社員を盗聴したり、狙ったりする理由は、産業スパイにはないのだが。

『妄想は落ち着いたか』

 何故わかったんだ、というタイミングで貴継が言ってきた。

『いや、いきなり帰るなと言ったら、お前のことだ。
 またいろいろ考えてるんだろうと思ってな』
と解説までしてくれる。

『単に疲れてて、帰りたそうに見えたから、言っただけだ。
 おかしなところに頭を回してないで、仕事に使え』