ケダモノ、148円ナリ

 どうしたい? って感じの妄想だな、と言われる。

「そうだ。
 お前のベッドも捨てろよ」

「なんでですか」

「キングサイズを買うから」
と言いかけた貴継が途中で言葉を止める。

 前から誰か来たからだ。

 貴継より随分年上のような、その辺に居そうなおじさんだ。

「おや、天野部長。
 それがお宅の新入社員ですか」

 愛想と嫌味の混ざった不気味な笑顔を向けてくる。

「いえ、これは人事部預かりなだけですが」
と言うと、ほう、と笑う。

「いいですねー。
 お美しい新入社員さんで」

 では、と行きかけたその男が、
「この産業スパイがっ」
と小声で言うのが聞こえた。

 思わず振り返ろうとしたが、貴継に止められる。

 エレベーターに乗り、
「産業スパイなんですか?」
と訊くと、腕を組んで後ろの鏡に背を預けた貴継に、

「真面目な顔で訊くなよ」
と言われる。