社食を出たあと、ロビーでみんなで少し話した。
昼休みが終わり、それぞれの部署に戻ったのだが、途中、廊下で、貴継と二人だけになった。
「少しは慣れたか」
と訊いてくるので、
「だから、さっき来たばっかりで慣れるわけないじゃないですか」
と言ったあとで、
「あの人、お姉さんだったんですね」
と言うと、
「……なにが言いたい」
と睨んでくる。
いや、格好つけなくても……と思い、はは、と笑った。
この年でおねえちゃんと暮らしていて、追い出されましたなんて言いたくなかったのだろう。
その通りだったのか。
貴継はいきなり弁明を始める。
「俺も金は出してたんだ。
あいつだけの家ってわけじゃ……。
いや、まあ、あいつの家だ」
と何故か言い直し、貴継は話を終わらせた。
自分の家を持つつもりはない、と言ったときの、あの横顔を思い出す。
どうもお坊っちゃまらしいのに、家を持たないって、なんのポリシーがあるんだろうな。



