ケダモノ、148円ナリ

 



 社食を出たあと、ロビーでみんなで少し話した。

 昼休みが終わり、それぞれの部署に戻ったのだが、途中、廊下で、貴継と二人だけになった。

「少しは慣れたか」
と訊いてくるので、

「だから、さっき来たばっかりで慣れるわけないじゃないですか」
と言ったあとで、

「あの人、お姉さんだったんですね」
と言うと、

「……なにが言いたい」
と睨んでくる。

 いや、格好つけなくても……と思い、はは、と笑った。

 この年でおねえちゃんと暮らしていて、追い出されましたなんて言いたくなかったのだろう。

 その通りだったのか。
 貴継はいきなり弁明を始める。

「俺も金は出してたんだ。
 あいつだけの家ってわけじゃ……。

 いや、まあ、あいつの家だ」
と何故か言い直し、貴継は話を終わらせた。

 自分の家を持つつもりはない、と言ったときの、あの横顔を思い出す。

 どうもお坊っちゃまらしいのに、家を持たないって、なんのポリシーがあるんだろうな。