ケダモノ、148円ナリ

 可愛いが、所詮、おまけの指輪か、と明日実は蓋を閉めた。

「明日実……」

 顔を上げた明日実は、心配そうに呼びかけてくる顕人に向かい言った。

「おにいさま。
 心配なさらないでください。

 私、もうおにいさまが居なくても大丈夫です。

 だって、私にも決まった人が……」

 え? という顔を顕人はした。

 ちょうどその男がすぐ側を通るところだった。

 実は、さっきからどうも気になって、目で追っていたのだ。

 明日実は、運良くか悪くか、程よく真横を通ったその男の腕を、飛んで火に入る夏の虫っとばかりに、むんずとつかんだ。

「私っ、この方と結婚するんですっ!」

 間があった。

「……誰が?」
と顕人が問うてきた。

「私が」

「誰と?」
と問うたのは、その男だったが、動転している顕人は気づかなかったようだ。

「この人とですっ」
と明日実は、逃すまいと腕をつかんだまま、男の背を押し、顕人に向かって突き出した。