貴継は今日は忙しいので、そのまま行ってしまった。
さて、自分も朝の仕事を済ませて、式に備えなければ。
って、これからなんか入社なのに、なんか変な感じだな、と思いながら、感謝込めて、社長に深々と頭を下げ、行こうとしたが、
「佐野くん」
と社長に呼び止められた。
「君は前社長にお会いしたんでしょう?
ならば、気づいているかもしれませんね」
「……本当は貴継さんのお父様が自分で、自分を追い出せと言ったんじゃないですか?」
貴継の父が本気でボンクラだったとはどうしても思えない。
昨日、貴継に電話をかけてきてたときの話し口調を聞いても、そう思えた。
有能で切れ者なのに、やる気がないから、みんな腹を立てていたのだ。
「クーデターは社員の心をひとつにするために必要だったんてす。
昔からの殿様商売気質が抜けない会社に嫌気がさして、優秀な人材がいっぱい引き抜かれていきました。
まあ、村松くんが言う通り、社長があんまり仕事好きじゃなかったから、クーデターの話に乗ったっていう人も結構居ましたけどね」
と苦笑いする。
まだ貴継の父を社長と呼んでいるようだった。
って、さっきの人、村松さんって言うんだったのか、と今知った。



