ケダモノ、148円ナリ

「クーデターを起こしたことに対する贖罪のため、私が専務に推薦したのに、貴継くんは断ったと言っておきましたよ」

 ふいにした声に、えっ? と明日実たちは振り返る。

 社長が立っていた。

「私の提案を、君が、今の自分では能力的にも人望的にも適任ではない、と言って断ったということにしました。

 その方が君の株も上がるでしょう」

 人望的にもって、おい、社長、それが本音か、という顔を貴継がする。

 だが、社長はこちらを見、
「まあ、人望は……ありましたかね」
と貴継を守ろうとするように、ひっしと貴継の腕をつかんで立つ明日実を見て、社長は笑う。

「いや、これは私の妻ですから、私を溺愛していて当然です」
と貴継は言い、明日実を後ろに下がらせる。

「だっ、誰が妻ですかっ。
 誰が溺愛してるんですかっ」
と訴えると、

「いや、お前、結婚してないのに、ああいうことしちゃいかんだろう」
と言いながら、既に記名済みの婚姻届を出してきた。

 えっ、という明日実の側で社長が笑う。

「君、いつか、いいこと言ってましたね。

 働け。
 会社のために働け。
 アリのように働け」

 淡々と社長は言い、笑う。