そんなこんなで会社に着くと、車の貴継の方が駅から歩く時間がない分、早かったらしく、もう先に来ていた。
ロビーの端、備品室に続く廊下に貴継の姿が見えた。
はっ、貴継さん。
また、睨み合ってらっしゃいますっ。
誰か重役の人が近くに居た。
「おっ、おはようございますっ」
と言いながら、その視界を遮るように間に入り、
「おはようございますーっ」
とまだ名前も知らないその重役の人に向かい、頭を下げた。
「だから、間に入るな……」
どんな無礼な社員だ、と貴継が言う。
「だってっ、貴継さん。
あのっ、みなさんと仲良くしてくださいっ」
「無理だ。
会社ってのは、そんなところじゃない」
「わかっています。
でも、だったら、何故、貴方は此処でそんな良い人のお面を被ってらっしゃるんですか?」
「待て。
俺は良い人だ」
えっ?
「……大変な勘違いですね」
いつの間にか、その重役の人の側に居た黒崎部長が吹き出した。
「強引に専務になるのはやめたようだな」
と言う。



