ケダモノ、148円ナリ

 



 そんなこんなで会社に着くと、車の貴継の方が駅から歩く時間がない分、早かったらしく、もう先に来ていた。

 ロビーの端、備品室に続く廊下に貴継の姿が見えた。

 はっ、貴継さん。
 また、睨み合ってらっしゃいますっ。

 誰か重役の人が近くに居た。

「おっ、おはようございますっ」
と言いながら、その視界を遮るように間に入り、

「おはようございますーっ」
とまだ名前も知らないその重役の人に向かい、頭を下げた。

「だから、間に入るな……」

 どんな無礼な社員だ、と貴継が言う。

「だってっ、貴継さん。
 あのっ、みなさんと仲良くしてくださいっ」

「無理だ。
 会社ってのは、そんなところじゃない」

「わかっています。
 でも、だったら、何故、貴方は此処でそんな良い人のお面を被ってらっしゃるんですか?」

「待て。
 俺は良い人だ」

 えっ?

「……大変な勘違いですね」

 いつの間にか、その重役の人の側に居た黒崎部長が吹き出した。

「強引に専務になるのはやめたようだな」
と言う。