ケダモノ、148円ナリ

 



 いつもの電車に乗っていると、扉が閉まる寸前、奥さんに支えられた安田課長が乗ってきた。

「か、課長……」

 なんで居るんですか。

「きょ、今日、入社式だから」

 ……死にますよ。

「大丈夫ですよ。
 貴継さんが……

 あ、失礼。
 天野部長が、安田課長が入念に準備をしてくださってたから、円滑に進められるって言ってましたよ。

 どうぞ、ゆっくり養生されてください。
 安田課長が早く元気になってくださらないと、貴継さんも困ってしまいます」

 結局、貴継さんと言ってしまいながら、そう言うと、
「うん。
 ごめんね。

 わかってるんだけどね」
と安田課長は、何故か謝ってくれる。

「ほら、あなた、帰りましょう。
 部長の奥様がこうおっしゃってくださってるんですから」

 いえ、あの、まだ妻じゃないんですけど、と思ったが、今、否定するのもな、と思い、はは、と笑う。

 安田課長も痛がりながら、少し笑っていた。