ケダモノ、148円ナリ

「……私、もうご先祖様に顔向け出来ません」

「待て。
 子孫を残そうとして、なんで顔向け出来なくなる」

 俺の先祖は喜んでいるぞ、と言い出す。

 だが、そこで貴継は、抱いている明日実の肩をぽん、と叩き、鏡の中の明日実の顔を見ながら、
「入社式だな。
 頑張れよ」
と上司の顔で言ってきた。

「……はいっ」

「ま、お前たちは立ってるだけで、頑張るの俺だけどな……」

「が、頑張ってください」
と言うと、鏡ではない方の明日実の顔を見ながら、大真面目な顔で言ってくる。

「大丈夫だ。
 今日はお前が一番綺麗だぞ。

 俺の愛情がたっぷり入ってるから」

 いやあの、入社式、綺麗とか綺麗じゃないとか関係なくないですかね? と思ったのだが、貴継は機嫌よくキスしてくる。

「あ、あの、私、今日は一人で行かせてください、此処から」
と言うと、貴継にもなんとなく、新入社員の気構えが伝わったようで。

「よし……、行ってこい」
と背中を叩かれた。

「はいっ」
と明日実は元気に返す。