ケダモノ、148円ナリ

「それで?」

「……破談にするかと訊いたら、そんな体裁の悪いこと出来るはずがないから、結婚して、二、三年は一緒に居てもらうって言われた」

「そうか。
 よかったじゃないか。

 一緒に暮らしているうちに情も湧いて、なし崩し的にそのまま夫婦で居るさ。

 おやすみ。
 俺たちは今、いいところなんだ。

 帰れ。
 残るなら、明日実の部屋を使え」

 いや……いいところどころか、悪いところですよ、と思いながら、明日実は貴継の陰からそうっと顕人を窺っていた。

「お前、専務になるそうだな」

 振り向いた顕人がいきなりそんなことを貴継に向かって言い出す。

「えっ」

「なんでお前が知っている?」

「いや、お前の会社の役員が、うちの父親、つまり明日実の父親でもあるんだが――」

 今、どさくさ紛れにそんな告白はいりませんから、と思っていた。

「父親を訪ねてきて、大層な文句を言っていたぞ。
 社長はお前に甘すぎると。

 一度は追い出した創業者一族の息子をたいした実績もないのに、いきなり専務にするとか」