ケダモノ、148円ナリ

「それは嫌ですっ」

 どういう意味で、それは嫌だと言ったのかな、と自分で思いながら、ネクタイを振り払ったとき、明日実は悲鳴を上げていた。

 貴継の後ろにぼうっと立つ人影があったからだ。

 ひゃーっ、と脳天を突き抜けるような悲鳴を上げ、思わず、貴継の後ろに隠れてしまう。

「……顕人」

 貴継の後ろに、左頬を腫らした顕人がぼんやり立っていた。

「おにいさまの……霊っ!?」

「生きてるだろ。
 薄情な奴だな」
と貴継は言う。

「どうした、顕人、ついに堂々と不法侵入か」
と言う貴継を生気のない目で見たあとで、顕人は明日実と貴継の居るベッドの端に腰かける。

 明日実を縛ろうとしたネクタイを持ったまま、おいおい、という顔で、貴継はそちらを見た。

「その顔はどうした?」

 顕人は両膝に手を置くと、俯き溜息をもらす。

「俺が明日実を好きなことが婚約者にバレて、バッグの金具のところで殴られた」

 えっ、と声を上げた明日実に、貴継は舌打ちをする。