「ただいま、帰りましたー」
誰も居ない部屋にそう呼びかけ、明日実は明かりをつけた。
すると、カーテンを閉めたままだった部屋の暗がりのソファに貴継が座っていた。
「なっ、なんで居るんですかっ」
腰を抜かしそうになって、そう叫ぶと、貴継は立ち上がり、
「今日は直帰だったからな。
だが、いつもより早く帰れてちょうどよかった。
明日実、驚くことがあるぞ」
と言ってくるが、いや……今が一番驚いてる気がするんですが、と思っていた。
「お前にご褒美がある」
「……なんのですか?」
「いつぞや、俺のことを可愛いと言ってくれたからだ」
「えーと、すみません。
いつの話ですか?」
と言うと、
「ちょっと前だな。
今なら、可愛いと言われたくらいでは、そんなに喜ばないが」
あのときはつれないお前がそう言ってきたから、嬉しかったんだ、と言う。
……今は、ずいぶん、私のほめ言葉の価値が下がっているようだな。



