ケダモノ、148円ナリ

「部長もそういうところあるから、気をつけてあげてね」

 いや、まず、貴方が気をつけてください、と思ったのだが、ん? と気づく。

 安田課長は苦笑いして、
「ごめん。
 僕、実は佐野さんと同じ駅なんだよね」
と言ってくる。

 ええっ?

「いつも天野部長が乗せて来てるよね。
 だから、その、見ないふりして、出来るだけ違う車両に乗ってたんだけど」

 そ、そうだったのか……。

 さすが人事課長。
 口も堅いし、気配りもすごい、と思っていた。

「部長にも迷惑かけちゃったから、早く謝りたくて。
 つい、佐野さんに声かけちゃったんだけど」

 い、いえいえ。
 今はそんなことお気遣いなく、と思っていると、
「ところで、佐野さんって、いつまで勤めるの?」
と訊かれる。

「えっ。
 なんでですか?」

 まだ入社もしてないんですけどっ?

「いや、だって、内定はしたけど。
 部長と結婚することになったから、一応入社して辞めるってことで、人事部付のままにしてるのかなと思って」

 佐野さん、確か学校推薦もらってたよね、と言われた。