ケダモノ、148円ナリ

 




 明日実は貴継と別れたあと、待合室でサンドイッチを食べてゆっくりしてから、いつもの電車に乗った。

 もうこの駅には戻ってこないので、お泊まりの荷物を持ったままだが、従姉の家に泊まったのは本当なので、まあいいか、と思っていると、いつも乗る駅を通り過ぎた頃、人波を抜けて、他の車両から安田課長がやってきた。

「おはよう。
 佐野さん」

「課長、大丈夫なんですか?」

 確か具合が悪くなって、貴継が代わりに出張に出たはずだ。

 人一倍責任感の強い安田が休むだなんてよっぽどのことだったのだろうと思っていたのだが。

「いやー、一昨日、夜も診てくれるし、いつも空いてるからと思って、近所のヤブ医者に行ったら、薬出してくれただけだったんだけど。
 いつまでも痛みが治まらなくてさ。

 どうも、虫垂炎だったみたいで」
と軽く言ってくる。

「ええっ?
 入院しなくていいんですか?」

「するよ、入院。
 今、点滴打って、病院から来たの」

 昼から手術、と言う。

 ひいいいっ。

「昨日から部長も居ないでしょ。
 僕まで居ないのもまずいかと思って」

 いやいやいや。
 早く帰ってくださいっ、と明日実の方が青ざめる。