鏡花の家の最寄りの駅は新幹線が止まる。
ちょうどよかったな、と思いながら、貴継は、
「じゃあな、明日実」
と在来線に乗る明日実と別れ、新幹線乗り場に行こうとした。
だが、明日実は、とことこと後ろをついてくる。
足を止めて振り向き、
「どうした?」
と問うと、明日実は俯きがちに、
「……いえ、ただのお見送りです」
と言う。
少し考え、
「時間があまってるからです」
と付け足してきたが、貴継は、ふふふ、懐いて来たな、と思っていた。
新幹線の改札近くにある、ちょっと小洒落た店で二人分のサンドイッチと飲み物を買った。
「いいです。
自分で出します」
と明日実は言うが、
「いや、此処まで見送ってくれた礼だ」
と言うと、明日実は渡されたビニール袋をつかんだまま黙っている。
「じゃあ、行ってくる」
券売機で買った切符を手にそう言うと、明日実は、しばらくじっとしていたが、やがて、顔を上げ、
「あのー……。
いってらっしゃい」
と言ってきた。



