「本当に朝ご飯、食べていかなくていいの?」
鏡花が欠伸をしながらお見送りをしてくれた。
「いや、間に合わなくなるから。
明日実、お前はまだ、ゆっくりしてってもいいんだぞ」
外はまだ暗い。
貴継は明日実を見下ろし、そう言ってくる。
「いえ。
お見送りしたいので」
と言うと、そうか、と言う貴継はちょっと嬉しそうだった。
では、お邪魔しました、と頭を下げ、玄関を出ようとすると、
「ちょっと」
と鏡花に腕をつかまれ、引き寄せられた。
「夕べ、どうなったの?」
と小声で訊いてくる。
「え。
どうって……」
「えーっ。
まさか、なんにもなしっ?
わざわざ離れた部屋にしてあげたのにっ」
と文句を言ってくる。
「全然、ケダモノじゃないじゃない、この人っ」
と指差し言う鏡花を、なんの文句を言ってるんだ、という顔をして、もう外に出ている貴継が振り返っていた。



