ケダモノ、148円ナリ

 さすがに申し訳なくなり、
「美味しいですよ」
と無理やり笑顔を押し上げ、言ってみた。

 いや、本当に美味しかったのだが、電話に出ない明日実のことが気になって仕方がなく、どうしても笑顔が出てこない。

 急だったし、時間がなかったから、何処に泊まることになったのか確認しなかったが、あの感じでは、実家などではないようだった。

 ……何処に行ったんだろうな。

 疑うことを知らない莫迦だから、顕人の実家にでも行ったんじゃあるまいな。

 あー、また莫迦って言いましたねーっ、と飛び跳ねる明日実の心地のよい声を思い出していたとき、カウンターに置いていた携帯に着信した。

 明日実だ。

 箸を置いて、引ったくるようにそれを取る。

「明日実っ。
 今、何処に居るっ!」

 店主が、ああ、という顔でこちらを見ていた。

 彼女か、嫁に逃げられた男とでも思われたようだ。

 だが、今はそんな周囲の自分に対する視線を気にしている余裕もない。

 何故、電話に出ないっ、と問い詰めそうになったが、ドン引きだ、という笹原の言葉を思い出し、ぐっと堪えた。