ケダモノ、148円ナリ

 



 貴継と荷物を抱え、マンションの一階に下りると、管理人のおじいさんと出会った。

 元警察官とかいう、ちょっと厳しい感じのおじいさんで、挨拶するくらいしか話したことはなかったのだが。

「おや、ご旅行ですか?」
とそのおじいさんが、にこやかに貴継に話しかけてくる。

「ちょっと出張で」
と貴継があの人当たりがいい方の顔で答えると、

「そうですか、
 ご主人が出張じゃ寂しいでしょう」
とおじいさんがこちらを見て言う。

 ご主人?

「ですから、私が居ない間は実家にでも行かせておこうかと」
と貴継は、なにやら当たり前のように返事をし、談笑している。

 いやいやいや。
 その人ご主人じゃないんですけどっ、と思いながらも、和やかに続いている会話に割り込むのもな、と思い、明日実は黙っていた。

「留守の間、よろしくお願いします」
と笑顔で貴継は言うが、その眉間の辺りから、変な念のようなものを感じていた。