「お前、昨日はよく眠れただろう」
起きた瞬間、貴継の顔が目の前にあって、びくっとしてしまった明日実に、貴継はそう訊いてくる。
やっぱり、ちょっと不機嫌そうだった。
はは、と苦笑いした明日実は、
「すみません。
ありがとうございます」
とまた謝り、礼を言ったあとで、だから何故、私が謝らなければならんのだ、と思っていた。
貴継はベッドから出るなり、
「俺は寝られなかった。
ペコペコ詫びろ」
と言ってくる。
「す、すみません。
出張なのに」
とそこは素直にペコペコ詫びると、
「いい。
新幹線で寝るから」
と言いながら、出て行こうとした貴継はドアのところで振り返る。
「夕べ入りそびれたから、今から風呂に入ってくる。
お前は荷物でもまとめてろ」
「えーっ」
ほんとに今日、家に居ちゃいけないのか、と思っていると、
「じゃあ、支度せずに暇なら、背中を流せ」
と言われたので、
「いっ、今から支度しまーすっ」
と慌てて、自室に逃げ込んだ。



