ケダモノ、148円ナリ

「嫌ですよ。
 緊張するじゃないですか」

「じゃあ、どっか行け。
 実家に帰るとか」

「ちょっと遠いんですよ、うち」

 職場に通うのは、ちょっと、と言うと、

「一日二日、いいだろう。
 それか、お前、休みを取って、俺と一緒に行くか?」
と言い出した。

「いやあのー。
 人事部長さま。

 ご存知でしょうが、まだ研修中なので、休めません」
と言うと、貴継は顔をしかめた。

「ともかく、友だちの家でも何処でもいいから行け」

 何処へなりと出て行け、という口調だった。

 いやいや、だから、此処は私の家なんだが。

「あのー、なんだかわかりませんが。
 そんなにご心配なら、鍵を付け替えたらいいんじゃないですかね?」

 ぽん、と手を打った貴継は、
「それもそうだな。
 どうせ、俺と結婚して出て行くんだから、まあいいかと思ってたんだが、付け替えとくか」
と言い出す。

 いや……いつ、それ、決定事項になったんですか、と思っていると、少し考えた貴継が言ってきた。

「いや、待て。
 お前は莫迦だから、ピンポン鳴らされたら開けるだろう。

『あら、おにいさま』
とか言って」