「あーずーみんっ」
といきなり呼ばれて、明日実は自動販売機の前で飲もうとしていた缶コーヒーを吹き出しかけた。
いつの間にか側に大和が立っている。
「一息ついてんの?
もうサボること覚えたんだね、結構結構」
と笑いながら、大和も缶コーヒーを買っていた。
「ところで、あずみんは、貴継と暮らしてるの?」
そう言われ、今度は咳き込んだ。
「な、なんでですか」
と自分でもヤバイと思うくらい動揺しながら、振り返る。
「いや、付き合ってるのは知ってるんだけど」
と言ったあとで、大和は明日実の頭に鼻先を寄せると、
「シャンプーの匂いとか違うのに、なんとなく同じ匂いがするから」
家の匂いなのかな、と思って、と言ってくる。
確かに、それぞれの家には独特の匂いがあるからな、と思ったとき、あの貴継の生家を思い浮かべていた。
今は黴臭く湿った匂いの充満しているあの家も、かつては違う匂いがしていたのだろう。



