トイレに行こうと席を立つと、廊下で貴継が声をかけてきた。
「おい、あずみん」
ひいっ、と辺りを見回す。
もちろん、誰も居ないのを見ての所業のようだったが。
な、なんで知ってるんだ、そのコードネーム(?)を、と思っていると、
「なに、あずみんとか気安く呼ばれてチャラチャラしてるんだ」
尻軽だな、と怒られる。
「あの……勝手に呼ばれることに決まってたものをどうしようもないと思うんですが。
っていうか、何処から聞いてたんですか」
どんな地獄耳ですか、と言うと、
「俺も呼んでやるぞ、あずみん」
と言い出した。
「や、やめてください。
キャラじゃないですよ、そんなっ」
と明日実は両耳を押さえるが、貴継は、その手を引きはがそうとする。
「手を離せ、あずみん」
「やめてください。
人が来たらどうするんですかっ」
「なにを言っている。
社長だって、家に帰ったら、奥さんのことを、かえたん、とか呼んでるぞ」



