「知っていました、私。
それでもおにいさまが好きだったんです」
勝手に人の上に乗ったまま黙っている貴継に明日実はそう言った。
貴継は一度、目を閉じ、開けて言った。
「いや……わかったよ」
と。
「だから、お前はおにいさまが好きだったんだ」
「え?」
「お前は、兄である顕人が、自分に好きだと言ってくるはずがないとわかっていた。
イバラの中で、ふわふわ恋愛っぽいものを夢見ているだけで済んで、なにも傷つかないとわかっていたから、お前は『おにいさま』が好きだったんだ」
「そんなこと……」
そう言いながら、少し、どきりとしていた。
気づいたからだ。
顕人のことを思い浮かべるとき感じる感情は、恋物語の本を読んでいるときと同程度のものでしかないと。
「お前の顕人への気持ちは恋じゃない。
……だったら、もう遠慮しない」
今まで遠慮してましたっけっ!?
と思っている間に、貴継は今までになく、強く口づけてきた。



