ケダモノ、148円ナリ

 



「知っていました、私。
 それでもおにいさまが好きだったんです」

 勝手に人の上に乗ったまま黙っている貴継に明日実はそう言った。

 貴継は一度、目を閉じ、開けて言った。

「いや……わかったよ」
と。

「だから、お前はおにいさまが好きだったんだ」

「え?」

「お前は、兄である顕人が、自分に好きだと言ってくるはずがないとわかっていた。

 イバラの中で、ふわふわ恋愛っぽいものを夢見ているだけで済んで、なにも傷つかないとわかっていたから、お前は『おにいさま』が好きだったんだ」

「そんなこと……」

 そう言いながら、少し、どきりとしていた。

 気づいたからだ。

 顕人のことを思い浮かべるとき感じる感情は、恋物語の本を読んでいるときと同程度のものでしかないと。

「お前の顕人への気持ちは恋じゃない。
 ……だったら、もう遠慮しない」

 今まで遠慮してましたっけっ!?
と思っている間に、貴継は今までになく、強く口づけてきた。