顕人が去ったあと、席に戻ろうとすると、明日実が書類を手にやってきた。
ハンコをもらうのを口実に話しかけてくる。
「部長、なんでおにいさまが此処に」
「なにか仕事で大和のところに来たらしいぞ」
と言いながら、ちょうど、ポケットにあったハンコをついてやった。
そうですか、と明日実は振り返っている。
「まだあいつのことが気になるのか」
と言うと、
「だって、おにいさまですから」
と言う。
「……あいつの結婚相手とか気になるか?」
「おにいさまの婚約者の方は、きっと美人でショートカットで、諸芸百般に優れていて、おほほほほって感じです」
と明日実は淡々と告げてくる。
「なんだ、それは……」
私の想像です、と明日実は言った。
「妄想の中で、なんで、いつも、その方がショートヘアなのか考えてみました。
きっと、私がロングだからです。
おにいさまは私とは正反対の方がお好みなのだろうと思って」
いや、ど真ん中ストレートにお前がお好みのようなんだが、と思ったが、もちろん言わなかった。



