ケダモノ、148円ナリ

 『おにいさま』か。

 彼女が自分の妹かもしれないと知ってからは、その呼び方が重くのしかかっていた。

 甘えるように彼女が自分をそう呼ぶ声が好きだったのに。

「ところで、顕人。
 鍵を返せ」

「だから、持ってないっ」
と言ったとき、ふと明日実がこちらを見た。

 声が聞こえたのかもしれないと思う。

 明日実は、何故、此処に? という顔を一瞬したが、すぐに、にこっ、と笑って手を振ってくる。

 ああ、可愛い。
 何度も思ったことだが。

 なんでこれが俺のものじゃないんだろう。

 こんな男と出会う前に、本家の地下牢にでも閉じ込めておけばよかった、と本気で思っていた。