ケダモノ、148円ナリ

「ところで、鏡花って女は何者だ?」

「言いませんでしたか?
 以前、此処に住んでらっしゃった私と顕人おにいさまの従姉です」

 ふうん、と貴継は、どうでも良さそうに言う。

「プライベートでは女の名前は覚えないことにしてるんだ。
 めんどくさいことによくなるから」

「……あの、私、誰だかわかりますか?」

 思わず、そう訊いてしまうと、阿呆か、と言われた。

「自分の妻の名前は間違えないぞ」

 そう言いながら、腰をつかんで抱き上げてくる。

 子どもに高い高いをするように。

「妻じゃありませんってばっ」
と叫ぶが、聞いていない。

「だが、今日はずっと指輪やってたじゃないか」

「外すと文句言われるからですよ。
 っていうか、もしや、これ、婚約指輪とか?」
と怯えて訊いてみると、

「これが婚約指輪とか、お前の親に失礼だし、顕人にも笑われるだろう?」
と言ってくる。

「そうですか?
 私は結構気に入ってるんですけど」

 これじゃ、いけませんか? と訊いてみた。