あれは、大学生のとき、明日実がうちに遊びに来たときのことだった。
庭で仔犬に襲われている明日実を微笑ましく眺めていたら、父親が言ってきた。
「お前、明日実を好きなのか?」
あれはやめときなさい、と父は言う。
抜けていて、お前の嫁に相応しくないから、という言葉を薄情にも想像していた。
そういう言葉であって欲しいと願っていたから。
だが、父の答えは違っていた。
「あれは、お前の妹かもしれないから」
父は、あっさりと、そんな死刑宣告にも似た言葉を言ってくる。
仔犬から逃れて、しゃがんだと思ったら、喜んで駆け寄った母犬に頭突きをされている明日実を見ながら顕人は言った。
「……大丈夫です。
知ってましたから、お父さん」
本当に勝手な人たちだ、と溜息をつきながら。



