「美味しい?」
鏡花と、その物静かな夫や子どもたちと食卓を囲む。
鏡花は、美味しい? と訊いてくるが、美味しくない、という答えは許さない女だった。
昔、懲りずに何度か言って、ひどい目にあったことがある。
「美味しいよ。
ちょっと味が濃いけど」
と昔の癖で、つい付け足すと、鏡花の夫、孝司(こうじ)がぷっと笑う。
彼も内心はそう思っているのかもしれないと思った。
……結婚して何年も経つ夫でもケチつけられないのか。
鏡花と結婚しなくて良かった、と心底思っていた。
「お嫁さんになる人は料理上手なの?」
「知らないけど。
あんまり自分で作るような感じじゃないかな」
「会ってないの?」
「なんかいつも忙しそうなんだよ。
お義母さんと二人で、ドレス見に行ったり、向こうで使う家具とか手配したり」
「あんたと結婚したいって言うより、結婚っていうものをしてみたいから、するって感じね」
と言う鏡花の言葉に、まさにその通りだな、と思ったとき、子どもたちが、ジュース、ジュースと騒ぎ出した。



