「ほう。
立派なマンションだな」
車を止めて、マンションの前に立った貴継が言う。
「は。
お褒めいただきありがとうございます」
「よし、行くぞ」
本気ですか。
本当に此処に住むつもりなんですか?
女の方に追い出されて家がないというのが本当なら、明日にでも、何処か用意させますからっ、と思いながら、今は逆らっても無駄そうなので、とぼとぼとついていく。
エレベーターには誰も乗ってこず、なんとなく、防犯カメラと緊急ブザーを確認してしまう。
貴継は目線を追ったらしく、なに見てんだ? という顔をしていた。
「別に働かなくてもいいんじゃないか? お嬢様」
貴継は、ふいにそんなことを言ってきた。
「別にお嬢様じゃないです。
それに、そういうわけにはいきません。
私も独り立ちしなければ」
と明日実は拳を作る。
ほう、そうか、とどうでも良さそうに言われているうちに、部屋に着いた。



