ケダモノ、148円ナリ

「この家のせいですか?」
と明日実は訊いた。

「貴方が決まった家を持たないのは」

 貴継は答えなかった。

 先程の様子からして、今、この家を所有しているのは、貴継の一家ではない。

 会社を追われたときに手放したのだろう。

「小金はあるが、それで買い戻せるような家じゃないしな。

 ……いつか取り戻したいと思って、何処にも定住せずに来たけど。

 なんだか今は、ちょっと。

 この家が過去の遺物のように感じられもする」

 そんなことを貴継は言った。

「荒れ果ててて、かつての面影がないからって言うんじゃないな」

 なんて言うか、気持ちの問題だ、と言う。

「仕事もやりがいがあって、毎日、充実してるからじゃないからですか?」

 毎日楽しいのなら、もう過去にこだわる必要はないはずだ。

「まあ、ある意味、今が一番楽しいな。
 お前が毎日、阿呆なことばかりやってくれるから」

 いや、待て、と思った。