「癒されたか? 明日実」
また来てね、とやはりイルカが手を振っている出口に向かいながら、貴継が言ってくる。
「はあ。
ある意味」
なにかこう、ほのぼのとしてしまったな、と思う。
どんな癒される場所に行っても、この人と居るだけで癒されないのではと思っていたのだが。
意外にも、イルカより、アシカより、この人に癒されてしまったようだ。
「おや、天野部長」
と声が聞こえて、そちらを見ると、極普通のおじさんが立っていた。
後ろでは、彼の子どもらしい娘さんが赤子を抱き、彼の妻らしき人が小さな孫に手を引かれ、ガチャガチャのあるところに連れていかれている。
よく見る光景だ。
誰だったっけ? と思ったのだが、あのとき、貴継を産業スパイだと罵ったおじさんだった。
スーツ着てないからわからなかった。
「呑気に水族館ですか。
しかも、新入社員を連れて」
と早速、嫌味を言ってくる。



