ケダモノ、148円ナリ

 
 


「癒されたか? 明日実」

 また来てね、とやはりイルカが手を振っている出口に向かいながら、貴継が言ってくる。

「はあ。
 ある意味」

 なにかこう、ほのぼのとしてしまったな、と思う。

 どんな癒される場所に行っても、この人と居るだけで癒されないのではと思っていたのだが。

 意外にも、イルカより、アシカより、この人に癒されてしまったようだ。

「おや、天野部長」
と声が聞こえて、そちらを見ると、極普通のおじさんが立っていた。

 後ろでは、彼の子どもらしい娘さんが赤子を抱き、彼の妻らしき人が小さな孫に手を引かれ、ガチャガチャのあるところに連れていかれている。

 よく見る光景だ。

 誰だったっけ? と思ったのだが、あのとき、貴継を産業スパイだと罵ったおじさんだった。

 スーツ着てないからわからなかった。

「呑気に水族館ですか。
 しかも、新入社員を連れて」
と早速、嫌味を言ってくる。