「貴継さんはお父さんが大好きなんですね」
文句言いながらも、此処に私を挨拶に連れてくるほど、と思って明日実は言った。
二人でまたあの海底トンネルを歩く。
「……いつわかった?」
「最初からですよ。
そっくりです」
と笑うと、
「昔は母親似だったんだが、やはり、年々似てくるようだな」
とちょっと不満そうにおのれの顎を撫でながら言っていた。
まあ、あの母親に似たいわけでもないが、と貴継は言う。
「お母様は?」
「俺を置いて出て行った」
「え……。
幾つのときに?」
「大学生のときかな?」
……それはもう、置いて出て行ってもいいのではないでしょうか。
「新しい男が出来たんだ」
「そのとき、お父様は?」
「もうアシカになっていた」
いや、アシカになったわけではないんでは……。
そのときには、もう離婚していたのだろう。



