ケダモノ、148円ナリ

 



「貴継さんはお父さんが大好きなんですね」

 文句言いながらも、此処に私を挨拶に連れてくるほど、と思って明日実は言った。

 二人でまたあの海底トンネルを歩く。

「……いつわかった?」

「最初からですよ。
 そっくりです」
と笑うと、

「昔は母親似だったんだが、やはり、年々似てくるようだな」
とちょっと不満そうにおのれの顎を撫でながら言っていた。

 まあ、あの母親に似たいわけでもないが、と貴継は言う。

「お母様は?」

「俺を置いて出て行った」

「え……。
 幾つのときに?」

「大学生のときかな?」

 ……それはもう、置いて出て行ってもいいのではないでしょうか。

「新しい男が出来たんだ」

「そのとき、お父様は?」

「もうアシカになっていた」

 いや、アシカになったわけではないんでは……。

 そのときには、もう離婚していたのだろう。