ケダモノ、148円ナリ

「お嬢さん」
と飼育員が言ってきた。

「此処、イルカのリングが人気なんだよ」

 下で買ってもらうといい、と言う。

 そういえば、売店で売ってたな、と思っていると、貴継はそこで初めて飼育員の方を見、
「あんた、アシカの係じゃないのか」
と文句をつけ始めた。

「いや、別にアシカの係だからって、アシカのグッズを売らなきゃいけないって法はないだろ。

 イルカの方が可愛いし」

「じゃあ、なんで、アシカの飼育員やってんだ」

「好きだから、アシカ。
 ハンコ押してるよりは楽しいぞ、貴継」

 お前は物好きだなあ、と言っている。

 やっぱりか。

「物好きはあんただ。
 いや、俺はあんたなんぞ知らん。

 俺の父親はボンクラという病にかかって、クーデターを起こされ、会社を乗っ取られたときに、離婚されて、死んだんだ」

 お父さん、と貴継はアシカに向かって話しかけている。

 こちらを手で示し、
「ふつつかな明日実ですが」
と言う。

「あの、明日実の枕詞がふつつかになっちゃってますけど」
と言うと、貴継の父は笑っていた。