ケダモノ、148円ナリ

 



 貴継が指名していたのは、さっきショーで見たアシカのうちの一頭だった。

 キャンディさんというメスのアシカだ。

 ちょっとおっとりというか、間が抜けていて、みんなを笑わせていた。

 貴継さんは、キャンディさんのファンなのかな?

 まさか、それで此処に通いつめているとか? と係員さんに消毒薬で手をシュッシュッされながら思っていると、飼育員さんがキャンディさんを連れてきてくれた。

 さっき、キャンディさんに芸をさせていた人だ。

 此処は、アシカごとに、担当が決まっているようだった。

 係員のおねえさんに渡されたキャンディさんの餌の魚を貴継が投げる。

 キャンディさんがうまくそれをキャッチし、飲み込んだところで、貴継が言った。

「これが俺の父親だ、明日実」

 貴継の目は、はっきりキャンディさんを見つめていた。

「……アシカに見えますが」

「アシカだ」

「メスのようですが」

「メスだ。
 さあ、15分、お父さんの時間を買い取った、挨拶しろ」
と貴継は言ってくる。

 いや、お父さんの時間を買ったっておかしいだろう。

 ふれあいタイムでなにやってんだ、この人は。