ケダモノ、148円ナリ

 この人には、ああいう人の方が似合うよな、と思っている間に、貴継は明日実をカワウソの前のベンチに置いて、居なくなってしまった。

 薄暗い中に、ひとり取り残され、明日実は、ぽつんとベンチに座っていた。

 目の前で子ども達がガラスに張り付き、カワウソを眺めている。

「かわいー」
と言うちっちゃな子ども達に笑う。

 こっちから見たら、君らも可愛いんだが、と思いながら。

 そのうち、貴継が戻ってきた。

 明日実の目の前に立ち、
「よし、誘拐されなかったな」
と言う。

「いや……子どもじゃないんですから」

「そろそろアシカのショーだ。
 行こう」
と明日実の手を引き、歩き出す。

「アシカ、可愛いですよね」
と笑って言ったのだが、貴継は前を見たまま、大真面目な顔で、

「そうだな」
と言っただけだった。