ケダモノ、148円ナリ

「えっ。
 ちょっと栗原くんっ」
と呼び止めようとすると、

「お前、また100円で買われそうになったな」
と声がした。

 ひっ。

 建物の陰から貴継がこちらを見ていた。

 い、いつからそこに……。

 貴方は刑事かなにかですか、と思っていると、貴継は、ほら、と明日実の鞄を投げてくる。

「帰るぞ。
 もう上は戸締りした」

 お前、遅いから、と言ってきた。

「安田課長は奥さんが待ってるんだ。
 あんまり遅くなると悪いだろう」

「そ、そうですね」
と言う明日実の手を、貴継はいきなり、つかんで、歩き出す。

「部長っ。

 社内っ。
 此処、社内ですっ」

「休みだ。
 誰も見てない」

「見てますよ、誰かーっ」
とキョロキョロ振り返っていると、

「ほんとお前は挙動不審だな」
と言われてしまう。

 誰のせいだ~っ。

「別に、誰かに見られても、俺は構わない」

 私は構いますーっ。