ケダモノ、148円ナリ

 



 貴継と安田課長に言われるまま、就職試験関係の書類を打ち、昼近くまで働いた。

「佐野明日実。

 これ、事業部まで持ってってきてくれ。
 戻ってきたら、帰ろう。

 ……もう帰っていいから」
と貴継が言い換える。

 自分たちと、人のいい安田課長しか居ないので、気を抜いていたようだった。

 いや、帰ろうでも部下への呼びかけとしておかしくない気がしますが。

 言い換えたので、余計怪しい感じに、と思ったのだが、安田課長は下を向いて、なにか計算していて無反応だった。

「では、行ってきまーす」
と別館の事業部までお届け物をする。

 休みの日とはいえ、結構出て来てる人居るんだな、と思いながら、本館に戻ろうとすると、自動販売機の前に見覚えのある後ろ姿が見えた。

「あ、栗原くん。
 ちょうどよかった」
と声をかけると、振り返った栗原が、

「お疲れー」
と言ってくる。

「なんだ。
 佐野さんも来てたの?

 人事も今、忙しいんだね」

「天野部長たちも今日出てて、ちょっとパソコン打ちに」
と言うと、ふうん、と言う。

 その言い方に、なにか含みがある気がして、ちょっと身構えてしまったが、特になにも言われなかった。