ケダモノ、148円ナリ

「あの……。
 なにか機嫌悪いですか」

 貴継はそんなこともわからないのかという顔で、
「お前がよその男に色目を使うからだろう」
と言ってくる。

「よその男って誰ですか?」

「稲本顕人に決まってるだろ」

「……いや、あの人、身内ですけど」

「でも、お前、あいつが好きなんだろう?
 結婚すると聞かされたら、動揺して、通りすがりの俺を婚約者に仕立てるくらい」

「好きとか、よくわかりません。
 私、今までおにいさまに頼り切りでしたし。

 それなのに、おにいさまが結婚のことを黙ってらしたのも、なんだかショックで」

「ま、所詮、俺なんて、貴様扱いだからな」

 この人拗ねるとたち悪いな~、と思っていると、貴継はなにを思ったか、
「今日は休みだから、会社まで乗せてってやろうか」
と言い出した。

 いや、こんな機嫌の悪い人に乗せて行ってもらうとか、ととりあえず、丁重に断った。