「おにいさまと話して、心が洗われたばかりなのに」
そう言うと、貴継の機嫌が一気に悪くなったのを感じた。
あっ、しまった、と明日実は思ったが、一度口から出た言葉は戻らない。
それに、本当のことだった。
顕人と話していると、気持ちが穏やかになるが、貴継と居ると、なんだかいつも心が騒ぐ。
感情が波立って落ち着かないというか。
寝る、と言って貴継は部屋に入ろうとする。
「あのっ」
と慌てて声をかけた。
振り返った貴継に、
「きょ、今日はありがとうございました。
迎えに来ていただいて……」
助かりました、と言おうとした。
だが、なんだかそれでは、貴継を都合良く使ってる感じになるし、自分の感情とは違う気がして、少し迷って、明日実は違う言葉を口にした。
「嬉しかったです」
貴継の表情が一瞬、止まり、そして、笑う。



