ケダモノ、148円ナリ


 



「おにいさまと話して、心が洗われたばかりなのに」

 そう言うと、貴継の機嫌が一気に悪くなったのを感じた。

 あっ、しまった、と明日実は思ったが、一度口から出た言葉は戻らない。

 それに、本当のことだった。

 顕人と話していると、気持ちが穏やかになるが、貴継と居ると、なんだかいつも心が騒ぐ。

 感情が波立って落ち着かないというか。

 寝る、と言って貴継は部屋に入ろうとする。

「あのっ」
と慌てて声をかけた。

 振り返った貴継に、
「きょ、今日はありがとうございました。
 迎えに来ていただいて……」

 助かりました、と言おうとした。

 だが、なんだかそれでは、貴継を都合良く使ってる感じになるし、自分の感情とは違う気がして、少し迷って、明日実は違う言葉を口にした。

「嬉しかったです」

 貴継の表情が一瞬、止まり、そして、笑う。