マイノリティーな彼との恋愛法



いい加減、周りのサラリーマンたちが帰り始めた頃。
私もそろそろ帰ることにして、お会計を済ませた。


「今日は話を聞いていただいてありがとうございました!また来ます」


外まで見送りに来てくれた女将さんにお礼を言うと、彼女はとても嬉しそうに目を細めた。
この朗らかさが彼女を慕ってたくさんのお客さんが集う秘訣なのかな。


「いつでも待ってるね。………………今度は渉くんと2人で、ぜひ」

「…………………………ハ、ハイ」


バレてる。
やっぱり完全にバレてる。


恥ずかしさに支配されながらもなんとか会釈し、足早に駅まで歩く。
冬空からはらはらと舞い降りる白いもの。


「…………あ、雪だ」


ニュースで山沿いの方はもう初雪が降ったって聞いていたけど、こっちもか。

今年の初雪は、1人で。
人通りもまばらな東口の路地裏で、真っ暗な空を見上げた。

どうりで寒いわけだ。

頼りなくて消えそうな雪は、私の肌や服に吸い付くように落ちては一瞬で消える。
道路に落ちるそれも同様で、なんだか儚かった。


しばらく空を見上げていたら、いきなり視界に神宮寺くんの顔が現れた。
音もなく頭ひとつぶんほど大きいヤツの無表情な顔が目の前に広がったので、思わず驚いて尻もちをついてしまった。

もちろん、「ぎゃあ!」という悲鳴つきで。
その悲鳴は可愛らしさはゼロで、むしろ巨大な虫を見つけてしまった時のものに近かった。


「えっ!?えっ!?じ、じ、じんぐ……」

「神宮寺です。こんばんは」


頭がパニックになっている私は、冷たいコンクリートにぺたんと座り込んでひたすら口をパクパクさせる。

それを、彼は冷静な様子で見下ろしていた。